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アリエッティ×種田陽平展/東京現代美術館 [アート]

映画よりも、アリエッティのお家をアリエッティサイズで復元したこっちの展覧会のほうが楽しみで、そのために映画も見た。
やっぱ、見てから行って正解だった。

さくらんぼが小振りのスイカくらいの大きさだったり、アリエッティのベッドの上に飾ってある木の実も同じくらいの大きさなので、寝ている時に落ちてきたら、怪我するのではないだろうか?

壁時計が人間の腕時計を「借りて」いるのね。
で、文字盤が漢数字なので、たぶん男の子のおじいさんの代に「借りて」きたのだろう。
ただ、半永久的に「借りて」いるのは、はたして「借りて」ることになるんだろうか。

期待通りでおもしろかったし、夏休み直前の平日で、一人占めできる時間があるくらい空いていたけれども、1200円はちょっと高かった。だって、アリエッティの部分は10分くらいで見終わっちゃうし、種田陽平展のほうは原画よりも写真パネルのほうが圧倒的に多い。

評判のいい音声ガイド込みで1300円とかなら納得できるかな。


ちょっと悔しかったので、常設展示も見てきた。
こっちのほうが、思考度は高い(あたりまえか)。


小村雪岱とその時代/埼玉県立近代美術館 [アート]

いままでどのくらいの才能ある画家が、歴史のなかに埋もれているのだろう。
私は死ぬまで、どのくらいの画家の才能に巡り会うことができるだろう。

なんとなく点けたテレビの『日曜美術館』の終わりのほうで、紹介されていた小村雪岱。
初めて北斎の『富嶽三十六景』「尾州不二見原」を見たときに受けた衝撃と、同じ物を感じた。
斬新としか表現できない、構図の妙。
すぐに見に行くことを決めた。

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「おせん」の挿絵のひとつ、群衆たちの傘の円、そこに降り注ぐ雨の縦線。
巧妙に計算された、完璧な1枚。
素晴らしい。

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日本人の美意識って、世界一だ。


展覧会は原画のほかにも版画や、長年、雪岱が装幀を手がけた泉鏡花の本が展示されている。
かなり見応えのある点数だ。

美麗な装幀は、当時、日本人の心がいかに豊かだったかを窺わせる。
現代日本の書籍は、どの出版社も自転車操業のため、チープな電子写植を使い、安い紙と安い装幀で大量生産されている。
内容があればまだしも救いはあるが、9割以上が紙とインク代の無駄なのだから、絶望的としか言いようがない。

しかし、雪岱の時代は、1冊1冊の書籍それ自体が、まるで美術品のようだ。
そして中に書かれている文章も、現代の読み捨てられる大量の駄文とは真逆にある、言葉の芸術だ。
「古き良き時代」。
ただ、往時、雪岱が挿絵を描いていた新聞小説よりも、挿絵のほうが人気があったとか、雪岱の装幀画のおかげで本が売れた、という現象もあったそうなので、今日の日本でも「ジャケ買い」という本の買われ方(CDも)があるから、そういう人の心理は同じようである。


雪岱の作品が展示されてある合間に、雪岱自身の言葉も飾られており、それによれば雪岱は「個性のない表情のなかに、微かな情感を表したい」のだそうだ。
それはつまり、「人間の泣き笑いの感情ではなく、仏像や人形の泣き笑い」だという。
だから雪岱の描く美人画は、いずれもほんのわずかな線の行方の違いで、喜怒哀楽が表現されている。
一見すると鈴木春信に似ていて、当時も「昭和の春信」と言われていたらしい。

雪岱は絵の他にも、歌舞伎の舞台美術も手がけていた。
雪岱の絵がそのまま三次元の舞台に表現されている。それを見ながら、蜷川幸雄さんの演出した舞台を思い出した。
なるほど、舞台も、美術としての視点を加えれば、また別の感想が生まれるのだ。
フツーとか評価しちゃってすみません、『リア王』。

いま現在も、どこかで才能のある人が、作品を生みだしているのかな。
芸術家がなかなか飯を食えない時代、願わくば才能が埋もれずに世に出てくるよう。


2月14日まで。
埼玉県立近代美術館。京浜東北線「北浦和」から徒歩3分。
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NO MAN’S LAND/旧フランス大使館 [アート]

以前、新宿の廃校を使ったアートイベントを見たことがあって、本来美術館ではない場所で展示物を体験するのはエキサイティングだったので、そういうイベントがあれば、ぜひ行きたいと思っていた。

そしたら、アート・テラーさんなる方のブログで紹介されてました。

新しい大使館を作ったフランスが、築60年の旧大使館を取り壊す前に、「だったら、なんかイベントやっちゃおう」ってことで、フランスと日本のアーティスト70人に協力してもらって、大使館ごとアートに。

破壊の前に創造?

まあ、そんなコンセプト。
大使館の建物も見たかったし。

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アートテラーさんのブログでもあったけど、「美術展」というより「文化祭」という感じ。
とっても楽しい空間だった。
やっぱり、建物まるごとってのは、子供心を刺激されるよね。
たぶん、ここに子供たち放したら、全身全霊で走り回るだろう。

実際、パパンママンに連れられ来ているお子さまたちは、それはもう興味津々と作品群に見入ってました。
美術館みたいに延々と作品が展示されているのではなくて、事務室として使われていた小部屋ごとに、アーティストがそれぞれ表現しているので、「次はなにかな?」というビックリ箱的面白さがあるのだ。

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大使館の建物自体もおしゃれで、格子窓や螺旋階段などが、なんとなくおフランス。

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中庭の植物も多く、桜が咲いたら、さぞや美しかろう。
日当たりもよくて、こんないい環境で仕事してた大使館職員の方々、羨ましいかぎりです。

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朝イチで行ったので、比較的ゆっくり見られたが、午後から人が増える一方で、夕方頃は行列だったみたい。

1月31日まで。
無料です。


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マッキアイオーリ展/東京都庭園美術館 [アート]

人間が最初に絵を描こうとした動機ってなんだったんだろう? 
自分が見て感動したものを、なんとか記録に残そうとしたことが、絵画の起源かもしれない。

感動と記録。

やがて文明社会が到来して国家ができて記録が必要になり、絵画は記録の手段として使われ、階級社会が形成されると、富裕層の好みの作品だけが作られるようになって、またそれとともに学問のなかに入り・・・・とかしているうちに、絵画はその存在理由がまったく違うものになってしまった。

19世紀に起こった様々な自然回帰への芸術運動は、産業革命をきっかけに社会が変化し、それにともなって芸術家自身が利権は度外視して、本来の衝動--つまりは感動したことを画面に表現する--で作品を生み出すべく、試行錯誤したなかから生まれたムーブメントだ。

「マッキアイオーリ」もそういう運動のひとつで、イタリアで発生し、「外光」を描き出すことを主眼としている。

カラバッジョやレンブランドのような、室内の光の表現ではなくて、田園や風景のなかの「光」。
後期にはバルビゾン派の影響も受けているそうだ。


とか言っても、日本人には馴染みがなく、えらそうに解説している私だって、この展覧会で初めて、その名称を知ったのだが。

同時期にフランスで同じような運動が起こり、そちらは「印象派」と呼ばれている。そっちのほうが有名なので、わかりやすくするためか、この展覧会のサブタイトルは「イタリアの印象派」となっている。

ちなみに「マッキア」とはイタリア語で「染み、斑点」のことで、本来は下絵段階でしか使用されなかった、筆の先で点々点と色をつけていく技法を、本画にも取り入れて描いたので、新興運動を好まないお歴々から「あいつらの絵は『染み』のようだ」と誹られていたのを、みずから活動の名前にしちゃったのだそうだ。

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会場となっている東京都庭園美術館は、旧朝香宮邸の建物をそのまま利用している。この建物だけでも一見の価値はあり、なかでも玄関のルネ・ラリックの作品は世界的にも貴重なもの。
以前よく来ていたが、引っ越してから足遠くなり、今回は1年半振りくらい。
平日だったせいか、美術展を見るのに、ちょうどよい来客数だった。

私はミレーが好きなので、バルビゾン派にも影響を受けているといわれるマッキア派の作品は、とても趣味に合った。
なかでも、フランチェスコ・ジョーリの『水運びの娘』は、傑作であった。
久しぶりに絵の前で感涙してしまった。

その絵を見た瞬間、イタリアの太陽と風を体感した。
イタリアの田園風景がまるで自分の故郷かのように、記憶として脳裏に蘇る。
水瓶を頭に乗せ、まっすぐに背筋を伸ばして大地を見つめる娘の、なんと崇高で美しいこと。
後ろ姿から娘の生命力がほとばしり、大地を渡ってくる風さえも描き出した、必見の一作である。


3月14日まで開催。
お勧め。


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考える人だって考えちゃうんである [アート]

いま、国立西洋美術館の新館がタダで見られちゃうんである。

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なにやら世界遺産登録運動に向けての、旧館改装の一環なのだそうなのだが。

昨年、国立西洋美術館のパンフレットに、「独立法人にされちまって、予算が大幅に削減されて青色吐息なんでぃ」という泣き言が書かれていて、「ダイジョブカ?」と思っていたのだが、前に向かって鋭意努力しているようだ。

そして、「開かれた美術館」を目指しているようで、太ッ腹なことに、展示している絵画や彫像の写真が撮り放題らしい。

あたりまえだが、フラッシュは禁止よ。


これからいろいろ美術作品に触れようという、若衆たちには、とってもよい効果を生むと思う。

世界遺産に登録できればイイネ。

アタシも応援してます。

だって、ここの常設展示、『ボルゲーゼ美術館展』よりはるかに充実してるぜ。

東京都美術館は、宣伝が誇大なのよ。
集客方法に長けてるのよ。


んで、西洋美術館。

予算がないなら、有志から募金募ったらいかがでしょう?
メンバーシップ制とってる博物館や美術館、よく見るもの。
アメリカ自然史博物館もそうだったよ。

そうなったら、アテクシも参加するさ。


でもそのまえに、レストランの業者変えてください。
立地はいいのに、美味しくないのでカナシイです。
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ボルゲーゼ美術館展/東京都美術館 [アート]

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ちょうどテレビでカラバッジョの特集見た流れで。
カラバッジョの絵は欧米各地でもよく見ておるのだが、絵がぜんぜん好みじゃないのでスルーしてたら、カラバッジョの暴れん坊ぶりをテレビ特番で知って、俄然興味が出た。

カラバッジョって、絵を描いて金になったら、博打・ケンカ生活突入、果ては人殺してお尋ね者、38歳でのたれ死んだろくでなし。
人格と芸術的才能は微塵の関係もないことを、身をもって証明してくれたお方。

そのろくでなしが晩年に描いた作品が上野で開催している『ボルゲーゼ展』に来ていた。
作品名は「洗礼者ヨハネ」

ヨハネって、たしかサロメに「くびー、くびが欲しーのー」と言われて、冤罪かけられて処刑されちゃった聖人さん。
顔がね、少女好みの美青年だったらしいのね。

「洗礼者ヨハネ」の作品は、カラバッジョが殺人でお尋ね者になってから、その罪の軽減を頼むために、パトロンのボルゲーゼ枢機卿に贈ったものだという。

あのねー。

あのー。

ヨハネがね・・・どう見ても、「モデルに男娼つかっただろ?」ってかんじなのね。

少年なのに、肌色が悪くて表情も疲れているし。
カラバッジョなら、聖人のモデルに男娼使うのもあり得る。
もしかしたら、ボルゲーゼ枢機卿好みの男の子を選んだのかもしれない。

いろいろ想像すると面白い絵でござんした。


他の出展作品で印象に残ったのが、『支倉常長像』。
この絵、慶長使節団のくだりで、日本史の教科書に必ず載ってるので何度も見ていたが、「猿みたい」と思っただけであった。

しかし、実際の絵をみると、常長の身にまとっている小袖袴と羽織の美しさに驚愕した。
スペインの文献にも、常長の装いのまばゆさについての記録が残っているのだが、まさに伊達政宗の家臣である面目躍如。
見事な着物だ。
袴と小袖は純白の白絹に金色のススキの刺繍、羽織は同じく純白の白絹で金糸銀糸の鳥獣の刺繍。
足袋は金色に銀糸の刺繍。
肘当て(筒袖?)の刺繍や大小の装飾も、日本の技術総決算というレベル。

伊達政宗って、すんごいお洒落さんで、そのセンスは日本史上随一だと、個人的に思ってる。
彼が着ていた水玉の陣羽織のデザインを見たとき、瞠目したまま声でなかったよ。

あと彼は目立ちたがりだから、異国の使節に出すのに、たぶん政宗みずからあーだこーだ、衣装をスタイリングしたのだろう。
政宗の気合が感じられる常長のコーディネイトであった。

ああ、これが常長じゃなくて、片倉重綱だったらもっとよかったのにー。
政宗よ、せっかく肖像画が残る機会だったのだ、伊達家中、一押しの美青年を派遣してくれよ(いや、政宗が手放すはずないか)。


ボルゲーゼ美術館のは、アカデミックな作品が主なので、宗教・神話関係ばかり。
キリストや聖人の受難とかが何枚か続いたかと思うと、脂肪率48パーセント、推定体重94kgの寝くされてるヴィーナスがごろごろごろごろ。
関取のようなヴィーナスのオンパレード。

うえーん、ダヴィデがボウボウのヒゲ生やしてる~。
勘弁してくれよぉ。

ボルゲーゼ枢機卿とは趣味あわん。


『聖セバスティアヌス』・・・・童顔にムダな筋肉質の体・・・何かを思い出す、と思ったら、今週号のあんあんの表紙だった。
げー、そっくりだ、あの頭の小ささもー。
なんてデジャブー。



4月4日まで開催。

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