マッキアイオーリ展/東京都庭園美術館 [アート]

人間が最初に絵を描こうとした動機ってなんだったんだろう? 
自分が見て感動したものを、なんとか記録に残そうとしたことが、絵画の起源かもしれない。

感動と記録。

やがて文明社会が到来して国家ができて記録が必要になり、絵画は記録の手段として使われ、階級社会が形成されると、富裕層の好みの作品だけが作られるようになって、またそれとともに学問のなかに入り・・・・とかしているうちに、絵画はその存在理由がまったく違うものになってしまった。

19世紀に起こった様々な自然回帰への芸術運動は、産業革命をきっかけに社会が変化し、それにともなって芸術家自身が利権は度外視して、本来の衝動--つまりは感動したことを画面に表現する--で作品を生み出すべく、試行錯誤したなかから生まれたムーブメントだ。

「マッキアイオーリ」もそういう運動のひとつで、イタリアで発生し、「外光」を描き出すことを主眼としている。

カラバッジョやレンブランドのような、室内の光の表現ではなくて、田園や風景のなかの「光」。
後期にはバルビゾン派の影響も受けているそうだ。


とか言っても、日本人には馴染みがなく、えらそうに解説している私だって、この展覧会で初めて、その名称を知ったのだが。

同時期にフランスで同じような運動が起こり、そちらは「印象派」と呼ばれている。そっちのほうが有名なので、わかりやすくするためか、この展覧会のサブタイトルは「イタリアの印象派」となっている。

ちなみに「マッキア」とはイタリア語で「染み、斑点」のことで、本来は下絵段階でしか使用されなかった、筆の先で点々点と色をつけていく技法を、本画にも取り入れて描いたので、新興運動を好まないお歴々から「あいつらの絵は『染み』のようだ」と誹られていたのを、みずから活動の名前にしちゃったのだそうだ。

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会場となっている東京都庭園美術館は、旧朝香宮邸の建物をそのまま利用している。この建物だけでも一見の価値はあり、なかでも玄関のルネ・ラリックの作品は世界的にも貴重なもの。
以前よく来ていたが、引っ越してから足遠くなり、今回は1年半振りくらい。
平日だったせいか、美術展を見るのに、ちょうどよい来客数だった。

私はミレーが好きなので、バルビゾン派にも影響を受けているといわれるマッキア派の作品は、とても趣味に合った。
なかでも、フランチェスコ・ジョーリの『水運びの娘』は、傑作であった。
久しぶりに絵の前で感涙してしまった。

その絵を見た瞬間、イタリアの太陽と風を体感した。
イタリアの田園風景がまるで自分の故郷かのように、記憶として脳裏に蘇る。
水瓶を頭に乗せ、まっすぐに背筋を伸ばして大地を見つめる娘の、なんと崇高で美しいこと。
後ろ姿から娘の生命力がほとばしり、大地を渡ってくる風さえも描き出した、必見の一作である。


3月14日まで開催。
お勧め。


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