白木葉子とエメラルダス

『あしたのジョー』がらみで過去の旅をした。
30年以上、前の旅。

アタシが白木葉子を嫌いだった理由は、ひとえに、ホセ・メンドゥーサ戦の直前、この土壇場で彼女が矢吹丈に告白したことである。

「好きなのよ、矢吹くん。あなたが・・・!」

リアル中坊だったアタシは、「えーこの期に及んでこの女、何ぬかすねん!」と思った。
そんときのアタシは、白木葉子の行動が、妊娠を武器に結婚を迫る女のそれと同じに映ってしまったのだ。

それから、アタシも世間の荒波をかいくぐり、白木葉子のことなんかすっかり忘れていたのだが、映画の感想を書くうえで、あらためて白木葉子のキャラ設定を確認するべく、他人様のブログを逍遥してみた。
すると、白木葉子ってけっこう男性に人気あるではないか!
しかも、アタシが嫌いになったあの告白シーンでハマった人が多いらしい。
いつも丈に対して冷たく当たっていた葉子の、涙を流しながらなりふりかまわなかった姿にぐっときたのそうだ。

な、なるほど!
それはツンデレではないか!

今までツンツンしていた女が、「あなたが好きなの行かないで」と取り乱しながら泣いてすがる。
しかし、そんな女を残して戦場へと旅だってゆく男。

うーん、究極の男のロマンだねぇ。

今ごろ気づいたアタシはこのていたらく。
でも、気づいたからって、後悔はしてないよ。
だって、アタシがその頃あこがれていた女は、エメラルダスだもの。

たしかハーロックだったか、「男は負けるとわかっていても、戦わねばならぬ時もある」
というセリフがあった。
それに関連した来生たかおの挿入歌で(もしかしたら、アルバムオリジナルかも)、
「どんなに惨めな姿でも、おまえなら見つめてくれるだろう。目を逸らさずに」というのがあって、「なるほど、戦いにゆく男を止めてはいけないんだ。最後まで見届けるのが、女の役目」と中坊の幼い頭では「かっけー」と思っていた。

だから、ホセとの決戦直前に虎の子出した葉子は、きたねー手を使う女と思ったのだ。

一方、エメラルダス(エメラーダ)は、トチローという愛した男がいて、娘までもうけていたのだが、トチローが死んだとき、娘を旦那の親友(ハーロックね)に預けて、自分は旅立ってしまうんだ。

すげー、かっけー。

でも、今、ちょっとは経験をした自分が白木葉子のあのときの行動を考えるに、彼女は丈との間に何もなかったがゆえに、あの告白をしてしまったのだろう思い至る。
エメラルダスは好きな男の子も生めたけど、葉子は何もないうえに、相手は死んでしまうかもしれなかったのだから。

もし、今のアタシが白木葉子の立場に立たされたら、どうするだろう。
思いは胸に秘めて、矢吹丈の決戦を見守ることが美学だ、と、アタシの男脳は言う。
美学も何もない、今、この時、自分の欲求に従え、あれもこれも欲しいんだ、と、アタシの女脳は言う。

どっちだろう。

ま、どっちにしても、そんなシチュエーションは未来永劫ありえないので、妄想するだけ時間の無駄ですね。

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あしたのジョー [映画]

21世紀なので、設定をいろいろ変えるのは構わない。
今の世の中いろんな圧力が多く、基本的にみんないい人になりたがっているから、まだ戦後が残っていた1960年代の湿った暗さが画面から出ないのは、百歩譲って看過しよう。

しかし。

白木葉子のキャラ付けは蛇足だ!

いらんいらん。あの時代のあらゆる女性がそうされていたように、白木葉子は床の間のお飾りでいーんだ。
ジョーの世界に、女は出る幕じゃないんである。

ヤマトの森雪も暴力女になってたし、『クローズZERO』にも余計な女の子キャラがいたなぁ。
女性観客動員を狙うという意図なら、的を大きく外れているよ。女だってフツーに格闘楽しむんだから、男の戦いの世界に女は目障りなんである。

白木葉子の生い立ち追加するくらいなら、もっと矢吹丈の悪逆の限りを尽くす暴れん坊ぶりを描いてほしかった。

それに、山下の美貌の前では、どんな女優も色褪せる。

って、いま気づいたんだが、香里奈と山下って、『カバチタレ!』で、恋人同士役だったではないか。高校生の。
あの頃の香里奈はハンパない美少女で、山下と遜色ないほどであったのに、年を経て普通の美人になってしまった、香里奈。
あと、彼女は庶民クサイ。

もとい。
『ハート・ロッカー』が痺れ死ぬほどカッコよかったのは、100パーセント男の世界を描き切っていたからである。さすが、女性監督が撮っただけある。

『あしたのジョー』を見ようと思ったきっかけは、メイキングを見たことである。
力石との決戦シーンで、伊勢谷のパンチを受けてしまった山下が、撮影再開後に気合いを入れるため、自分の顔をガシガシ殴っていた。

ああああ、あの綺麗な顔を自分で殴るなんて〜。
山下も男だったのね。
切ないまでの、萌。
ってなもんだ。

あと、同シーンの撮影で、「うぉぉぉぉー」雄叫んでいる山下。
オスだぜ、山下。

しかし、本編ではそんな山下ジョーは表現されておらず、計算された格闘シーンはそれなりに見られるものの、やはり作り物の感は否めない。
ガチの拳闘で、あのメイクは控え目すぎるだろう? アニメでは二人ともボコボコに腫上がってなかったっけ?
せっかく、あの綺麗な顔なのだから、ボコボコ血まみれが見たかった。

力石の体重測定シーンとか(マジびびった。ナチ収容所のユダヤ人レベル→つまり餓死寸前)、ノックアウトされたジョーなめ力石の構図とか、原作やアニメファンには「おおっ」と思うシーンはいくつかあったものの、ジョーの世界は刹那の美学だと思っているアタシとしては、もともと白木葉子というウザかったキャラが、さらに肉付けされて出てきちゃったのは、ひっじょーに残念であった。


あと、主題歌も残念。
なんで今更宇多田ヒカル?
尾藤イサオやジョー山中、それに替われる男性歌手が良かった。




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