キャタピラー [映画]

ネタバレあり。










寺島しのぶさんの演技が見たかったので。

話は、日中戦争から太平洋戦争にかけての時代を背景にした、夫婦のドラマ。

まず、戦争で両手足を失い、頭部にも重傷を負って聴覚と声帯も失った軍人が、クソがつくくらい下種な人間。
戦争に行く前は、子供が産めないからと妻に暴力を振るい、役立たずと罵って虐待する。
戦争中は現地の女性を強姦し殺す。
戦地から帰還して、「軍神」と政府からお茶を濁された男は、ただひたらすら性欲・食欲の権化と化す。

いくら現代とは感覚が違うとはいえ、あの時代でも女性を大事にしていた男性はいくらでもいるから、この「軍神」になった男は、どこまでも下劣で下品なだけだ。
そして、寺島さん演じる妻も、あの時代の特有の、どこにも行き場がない女。
だんなの世話をしながら、時折不満をぶちまける姿は、現代の「妻」にも見出すことができる。
たとえば、やりたい放題やってきたダンナを介護している妻。
妻を家政婦あつかし、浮気しほうだいの夫が寝たきりになった時、その妻がとる行動は、古今東西同じである。
憎しみ9割、愛情1割。

この夫婦間の下劣な関係に的を絞れば、人間の汚い本質をえぐりだせたのに、ヘタに戦争からめちゃったせいで、すごい白ける作品になった。


だって、あの夫婦は、戦争がなくても悲劇で下劣だもの。


なので、作品としてはイマイチだが、寺島さんの演技と元ちとせさんの歌は価値がある。
もともと我も性格も強い寺島さんが、夫のいいなりにならざるを得なかったあの時代の女性を、見事とは言わないが、さすがに演じていた。


しかし、わずか80分の映画なのに、長かった。


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